アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.15 No.1 (2015)

原著論文

居住空間における精油の制菌効果

著者名 橋本一浩 川上裕司 中島麻諭子 菅沼薫 熊谷千津 島上和則 手塚千史 野田信三 堀田龍志 村上志緒 山本芳邦
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)1-7

精油は真菌,細菌,ウイルスなどの微生物に対し,制菌効果を持つことが知られている。本稿では,Tea TreeとThymeの2種の精油を空間に蒸散させることによる,空中浮遊微生物に対する制菌効果試験について報告する。
0.17m3の小型チャンバーにAspergillus versicolorおよびStaphylococcus aureusを付着させた試験片を吊るし,チャンバー内に精油を充満させて暴露させた。その結果,2種の精油ともに試験片に付着させたA. versicolorおよびS. aureusの生菌数を有意に減少させた。A. versicolorおよびS. aureusの減少の幅はThymeのほうがTea Treeよりも顕著であった。
さらに,この2種の精油を一般住宅の室内に蒸散させ,浮遊真菌に対する制菌効果を評価した。試験の結果,Tea TreeおよびThymeの蒸気によって室内の浮遊真菌濃度が減少した。特に,Cladosporium spp.の濃度が有意に減少していた。

キーワード

制菌効果,精油,微生物,真菌,細菌

匂いによる疲労回復手法がホルモン動態と皮膚水分量に与える影響

著者名 福田早苗 木村健太 藤井比佐子
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)8-16

閉経後の女性では,ホルモン動態の変化により,皮膚の状態の変化,不定愁訴の出現が認められる。本研究では,匂いによる疲労軽減が,閉経後女性のホルモン動態と皮膚水分量の変化と関係するかについて検討することを目的とした。研究1では,クラリセージ,グレープフルーツ,ジャスミン,ゼラニウム,ペパーミント,ラベンダー精油を用い,56名の閉経後女性対象者に対し,いずれかの精油をくじにより割り当て,精油の入った小瓶を匂い,精油の効能について学習する方法を実施させた(以下介入と表記)。介入の前後で,皮膚の水分量,自律神経機能,起床時コルチゾール,女性ホルモンを測定した。研究2では,研究1の結果で最も疲労得点が下降した精油(グレープフルーツ)を用いてクロスオーバー群間比較試験を実施した。介入方法は1と同じ手法,評価項目も1と同様であった。介入群と対照群の間の差を検定した結果,意欲得点で有意な上昇が認められたがほかの項目に有意な差は認められなかった。本介入はクロスオーバー法では,疲労軽減効果が認められなかったため,閉経後女性のホルモン動態と皮膚状態変化に本介入方法がかかわるかどうかについては現段階では結論が出すのが難しいと考えられた。

キーワード

グレープフルーツ,エストラジオール,疲労

アロマテラピーの受療者と施術者におけるラベンダーの経皮吸収と生理・心理・生化学的作用

著者名 上馬塲和夫 小川弘子 許鳳浩 八塚幸枝 浦田哲郎 浦田彰夫 日下一也 中井富士美 中田未央 朝野真佐美 浜田志保 加藤佳子 上島裕子 御影雅幸
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)17-31

アロマテラピーにおけるラベンダー精油の体内の血漿中の濃度変化と生理・心理・生化学的作用との関連性を調査した。健常成人女性7組(施術者7名と受療者7名,39±10歳)を対象に,受療者には消臭マスク装着させ,ランダムに30分間のアロマトリートメントを腹部と両側上下肢に行った。3%ラベンダー(Lavandula angustifolia)/セサミサラダオイル30mlでアロマトリートメント(3%ラベンダー/キャリアオイル群:LO群)を行い,キャリアオイルのみ群(O群)と比較した。受療者と施術者共に,血漿酢酸リナリルおよびリナロール濃度,血清脂質,抗酸化能,血圧,心拍変動,心理学的検査(VASスケール)を90分間経時的に測定した。
精油中の酢酸リナリルの血漿中濃度は,受療者の平均値がアロマトリートメント開始5分後から30分後までは定常状態を示したが,アロマトリートメント終了30分後では定常状態の数値は半減した。一方,リナロールについては異なる挙動を示し,血漿中濃度は,アロマトリートメント終了時最大値に達し,トリートメント終了30分後には最大値の5分の1まで低下した。なお,施術者では,精油中成分を検出できたのは1名のみであった。
生理学的,心理学的,生化学的検査値は,施術者と受療者で,LO群とO群とで異なる変化を示した。受療者の血漿酢酸リナリル濃度は,個人差を認めたが,各自の各測定時点での心理学的,生理学的値,生化学的検査値との間に,それぞれ有意な相関性を示した。
以上,薬理・生理・心理療法(Pharmaco-physio-psychotherapy)と呼べるアロマテラピーの複雑な作用機序の一端と,経皮吸収の時間経過の個人差を明らかにすることができた。

キーワード

ラベンダー,経皮吸収,生理学的作用,心理学的作用

芳香浴環境下,自宅で実施する睡眠の質評価の試み-客観評価(睡眠脳波),主観評価(POMS・VAS)-

著者名 野田信三 福島明子 熊谷千津 島上和則 手塚千史 堀田龍志 村上志緒 吉田英里子 山本芳邦
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)32-38

自宅で実施される芳香浴が睡眠に与える影響を睡眠科学的に実証するため,被験者自身による自宅での睡眠脳波計測および2種類の主観評価(POMS, VAS)試験を試みた。
公募による男女38名(男性1名,女性37名,年齢23~58歳)を被験者とし,ラベンダー(L条件)とコントロールの精製水(C条件)を枕元で芳香させ,睡眠脳波計測を連続する2週間,被験者の自宅で実施した。睡眠脳波計測の成功率は,計測予定数380(38人×10晩)に対して実施数は366(96.3%),解析可能データ数は363(95.5%)であった。試験期間中,被験者身体の異変,計測機の破損・誤作動などはなく,自宅での脳波計測は安全に施行された。すべての睡眠変数(総就床時間,入眠潜時,深睡眠の割合,中途覚醒の割合,睡眠効率,第一周期のデルタ波パワー値)について,条件間で有意差は認められなかった。入眠までの時間が30分以上の被験者3名,深睡眠の割合が平均6%未満の被験者4名を,相対的不眠傾向のある分析対象者とし,条件間の比較を行ったところ,入眠および深睡眠それぞれ,有意差は認められなかったもののL条件下で睡眠の良化傾向が確認された。主観的な評価としてPOMSおよびVASをL条件,C条件間で比較した。POMSの緊張-不安,疲労,混乱の尺度で有意差,怒り-敵意の尺度で良化傾向,VASの全項目で条件間の有意差が認められ,睡眠中にラベンダーで芳香浴することにより覚醒時の気分にポジティブな変化をもたらすことが確かめられた。

キーワード

アロマテラピー,睡眠脳波,ラベンダー,芳香浴,POMS, VAS

アロマコラージュ療法で制作したフレグランスによる心理・社会・身体的効果

著者名 福島明子
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)39-53

アロマコラージュ療法(Aromacollage Therapy: ARCT)で制作したフレグランスによる芳香浴の効果をペンダントを用いて検討した(ARCT群:N=20, 対照群としてラベンダー精油群:N=22。Time 1:ベースライン,Time 2:ペンダントあり・香りなし,Time 3:ペンダントあり・香りあり,Time 4:フォローアップ)。フレグランスによる芳香浴の効果として,気分の高まり,熟睡感の深まり,調査期間全体をとおしたネガティブな気分の低さ,ペンダント装着による充実感の高まり,混乱の低減,作品制作の楽しさやフレグランスの満足度との関連が明らかにされた。ラベンダー精油による芳香浴の効果として,香りを好んだ人ほどネガティブな気分や身体感覚が強く,自己肯定感や社会的スキルが低く,ペンダント装着をやめた後の熟睡感が深まることなどが確かめられた。共通の効果として,芳香浴による自尊感情,自己実現的態度,自己表明・対人的積極性,社会的スキルの向上,不快な身体感覚の低減,ペンダントと香りの相乗作用によるネガティブな気分の軽減,芳香浴が特に有効に働くストレッサーがあることが示された。

キーワード

アロマコラージュ療法,フレグランス,ペンダント,心理・社会・身体的効果

キャリアオイルのチロシナーゼ活性阻害およびメラニン産生抑制作用

著者名 吉金優 熊谷千津 島上和則 手塚千史 野田信三 堀田龍志 村上志緒 山本芳邦 沢村正義
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)54-62

本研究は,アロマテラピーで使用されるキャリアオイルのもつ特性を明らかにすることによって,より安全でより機能的な応用に関する基礎的情報提供に資する目的で行った。フラノクマリン類はある種の植物に存在し,紫外線存在下で光毒性を示すことが知られている。一般に,フラノクマリン類の定量的抽出には,多くの操作を要し,時間と労力が必要である。われわれは,今回,キャリアオイル中のフロクマリン類の迅速・簡便な分析法を開発した。16種類のキャリアオイル中に少なくとも光毒性をもつソラレン,キサントトキシン,ベルガプテン,イソピムピネリンのフロクマリン類は含まれなかった。一方,生化学的な視点からキャリアオイルの美白作用の可能性を追求した。実験に供したすべてのキャリアオイル試料には,マッシュルーム由来チロシナーゼ阻害作用がみられた。なお,ホホバ油については,その阻害作用はごくわずかであった。これらキャリアオイルのチロシナーゼ阻害作用に関しては,マウスB16メラノーマ細胞におけるメラニン産生抑制作用の結果によってもさらに裏付けられた。以上,本研究は,キャリアオイルの安全性および美白効果の存在を示したものである。

キーワード

キャリアオイル,フロクマリン類,チロシナーゼ,メラニン,美白

片頭痛患者におけるアロマテラピーの効果

著者名 岩波久威 辰元宗人 福島明子 平田幸一
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)63-67

目的:片頭痛患者における不快なにおい(香水やタバコなど)は知られているが,心地よい香りについては明らかでなかった。そこで,過去にわれわれは,心地よい香り(好きな香りとリラックスできる香り)の調査を行った。本研究は,その調査で得られた結果を基に片頭痛患者にとって心地よい香りを用いた芳香浴を行い,頭痛発作回数を減らすことができるか検討を行った。
対象と方法:対象は片頭痛患者44例(アロマテラピー導入群22例,アロマテラピー未導入群22例)とした。アロマテラピー導入群は3種類(オレンジスイート精油,グレープフルーツ精油,イライラン精油)のうち1種類の香りを選択してもらい,毎日定時に1カ月間,嗅いでもらった。頭痛ダイアリーはアロマテラピー導入1カ月前から導入1カ月後までの計2カ月間記載してもらい,前後の頭痛発作回数を比較した。また,アロマテラピーの導入前,導入2週間後,導入1カ月後の計3回,Beck Depression Inventory (BDI),日本語版Profile of Mood States (POMS)短縮版に回答してもらい変化を検討した。
結果:アロマテラピー導入群の月平均の頭痛発作回数は,導入前7.8±4.6回から導入後5.9±3.7回とアロマテラピー未導入群と比べ有意に減少した(p<0.01)。BDIの平均は,8.5±8.0点から6.2±7.8点へと有意に減少した(p<0.01)。POMS短縮版の平均は,Total Mood Disturbanceが32.0±33.6点から26.5±37.6点へと有意に低下した(p<0.05)。香りの種類別では,オレンジスイートはTotal Mood Disturbance, 緊張-不安,怒り-敵意,疲労が,グレープフルーツは怒り-敵意が,イランイランはBDIが有意に低下した。
結論:片頭痛に対するアロマテラピーはラベンダーが推奨されているが,今回の検討により,オレンジスイート,グレープフルーツ,イランイランによる芳香浴にも頭痛の改善効果がみられた。片頭痛患者にとって心地よい香りを選択して芳香浴を行えば,頭痛発作回数を減少させる可能性がある。

キーワード

片頭痛,頭痛,アロマテラピー,Beckのうつ病自己評価尺度,日本語版Profile of Mood States短縮版

アロマトリートメントの心理的効果―活気の増加と混乱の低減―

著者名 浦口真喜 片山貴世子 柴田由紀子 高倉里紗 高比良晶代 玉石昌代 中村真子 古郷智津子 松浦貴美子
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)68-77

この研究の目的は臥床安静の効果を統制したアロマトリートメントの心理的効果を検討することである。実験協力者は入学前の子どもを育児中の母親であった。49名の実験協力者を,アロマトリートメント(以下,AT)群28名,コントロール(以下,安静)群21名に振り分けた。AT群は20分間のコンサルテーションで精油と施術部位を選び40分間のアロマトリートメントを受けた。安静群は40分間の臥床安静を行った。両群とも介入前後にPOMSを用いて心理評価を行った。実験は2週間の間隔を空けて2回行った。AT群21名,安静群17名が終了した。得られたデータを3要因分散分析で解析した。緊張-不安,抑うつ-落込み,怒り-敵意,疲労においては,両群同様に介入後の得点が有意に低減し(p<.01)群間の差はみられなかった。活気においてはAT群においてのみ介入後の得点が有意に増加した(p<.01)。混乱においては安静群も(p<.05)AT群も(p<.01)介入後の得点が有意に低減したがAT群の介入後得点は安静群と比べて有意に低かった(p<.05)。活気の増加と混乱の低減は臥床安静の効果を統制したATの効果であることが示唆された。さらなる研究とデータの蓄積が必要である。

キーワード

アロマトリートメント,臥床安静,POMS

20種類の精油におけるCandida albicansに対する抗真菌活性

著者名 松崎友祐 辻澤利行 中村真理
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)78-87

Candida属真菌は,日和見感染症を引き起こし,口腔カンジダ症では口腔内疼痛などの原因となる。特に,要介護高齢者などでは,義歯表面に付着したCandida albicansによる汚染が指摘されている。われわれは,精油がC. albicansに汚染された義歯の殺菌洗浄剤となり得るか,抗真菌活性について評価した。精油20種類を各3社の販売元より購入し,計60種類,また,界面活性剤であるTween 80およびTween 20の2種類を無添加,添加の各条件で用い,計180パターンの抗真菌活性について標準的な抗真菌薬感受性試験法に準じて検討した。その結果,半数以上の精油は界面活性剤無添加であっても抗真菌活性を示したが,界面活性剤添加により活性を示した精油数は増加し,なおかつ低濃度で活性を示した。しかし,同一の精油でありながらも,活性に大きな差を認める精油も存在した。また,Tween 20添加のほうが,Tween 80添加に比較して,より低濃度で活性を示す傾向を認めた。多くの精油はC. albicansに対して抗真菌活性を示すが,同一名や同一品種の精油であっても精査を行い,界面活性剤についても検討を行うことが必要である。

キーワード

精油,口腔カンジダ症,Candida albicans,Tween 80,Tween 20

視床下部神経細胞株に対する精油の効果―神経細胞保護活性スクリーニング系の開発―

著者名 川原正博 水野大 中村亜紀子
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)88-95

アロマテラピーは近年疾患の治療・予防などにも用いられているが,その神経系に対する効能にはいまだ不明の点が多い。筆者らは,不死化視床下部神経細胞(GT1-7細胞)を用いて,精油の新たな効能を探索してきた。ヒドロキシラジカルを生じる過酸化水素,虚血性神経細胞死にかかわる亜鉛,アルツハイマー病との関連が示唆されるアルミニウム,抗エストロゲン剤であるtamoxifenなどは,GT1-7細胞の細胞死を引き起こし,種々の疾患発症にかかわることが明らかになっている。本研究では,これらの薬物による神経細胞死に対する保護活性を持つ精油を探索する目的で,GT1-7細胞を用いるスクリーニング系を開発し,さまざまな精油と神経細胞死誘起物質とを共投与した結果,いくつかの精油に保護効果があることが観察された。本研究で開発したスクリーニング系は,簡便かつ短時間で結果を観察することが可能であり,ヒトに対する生理心理学的研究と融合させることによって,精油の新たな効能が開発されることが期待される。

キーワード

女性ホルモン,脳血管性認知症,アルツハイマー病,フリーラジカル

天候による心身の不調に対する精油の効果

著者名 飯尾友愛 柴倉美砂子 片岡幹男
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)96-103

目的:天候から受ける身体や気分の不調に対しての精油の香りによる効果を評価した。
方法:対象者は岡山大学医学部保健学科に同一時間帯に通学・通勤する20~40代の健康成人31名(21~42歳,平均年齢22.9±0.7歳)とした。日照時間が午前中の可照時間の50%以上を晴天とし,50%未満を天候不良とした。晴天時と天候不良時において,それぞれうがい後(前)と水を嗅いだ後(水),精油を嗅いだ後(精油)に,疲労感VAS検査,POMS短縮版心理テスト,血圧,唾液アミラーゼ活性の指標を用いて評価した。精油は,オレンジ・スイートとローズマリー・シネオールの2種類をし,1,000倍希釈した精油20mlを入れたプラスチックチューブを対象者自身で鼻腔下に近づけて持ち,sniffing法で2分間嗅いだ。
結果:晴天時と天候不良時で,用いた評価項目において有意な差は認められなかった。オレンジでは最低血圧が天候不良時,VASとPOMS(総合的感情指標[TMD])が晴天時に前に比べて精油で有意に減少していた。ローズマリーでは最高血圧,POMS(疲労 [F]と [TMD])が天候不良時に前に比べて精油で有意に減少していた。オレンジ精油とローズマリー精油の間で,評価指標に有意な差は認められなかった。

キーワード

天候,オレンジ・スイート,ローズマリー・シネオール,VAS,POMS

介護職員における継続的なセルフハンドトリートメントのバーンアウトと不安に対する効果

著者名 大山末美 宮里文子 大門美智子 今西二郎
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)104-114

本研究では,ネロリ精油(Citrus aurantium ssp. amara)を用いて行う継続的なセルフハンドトリートメントが,バーンアウトおよび不安の軽減に対する効果を検討することを目的とした。対象は介護職員で,コントロール群20名,精油群13名,オイル群11名であった。1日5分間のセルフハンドトリートメントを自宅で実施し,セルフハンドトリートメント演習前,1・2・4週間後にバーンアウト尺度,STAIを用いて評価した。結果,3群間に1・2・4週間後のバーンアウト,STAI得点に有意差はなかった。精油使用の有無に関しては,バーンアウトは,精油群で演習前と2週間後,4週間後の間で得点の低下に有意差があり,(それぞれ,p<0.01, p<0.001),オイル群では演習前と4週間後の間で得点の低下(p<0.01)に有意差を認めた。また,STAI(状態不安)は,オイル群で演習前と1・2・4週間後の間で得点の低下に有意差があった(それぞれ,p<0.01, p<0.05, p<0.05)。

キーワード

セルフハンドトリートメント,バーンアウト,不安,ネロリ精油

研究ノート

精油10種の皮膚刺激と濃度に関する研究

著者名 野田信三 熊谷千津 島上和則 手塚千史 村上志緒 山本芳邦
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)115-121

精油のヒト皮膚に対する安全性を確認する目的で,グレープシードオイルをキャリアとした各精油を,1%, 3%, 5%の濃度で貼付し評価した。用いた方法は,河合法(レプリカ法)であり,肌に直接触れる物質が惹起する接触性皮膚炎を予測する手段としてわが国において広く用いられている方法である。評価した精油はオレンジ・スイート精油,ラベンダー精油,サンダルウッド精油,ローズオットー精油,スイートマージョラム精油,ローズマリー精油,ユーカリ精油,ペパーミント精油,ゼラニウム精油,ティートリー精油の10種類である。20名の健常成人に対し,同時に2種類の精油を各濃度に調製後,腕の屈曲部内側に貼付し24時間後に皮膚のレプリカを採取して顕微鏡による目視判定を行った。その結果,1%の濃度においては,いずれの精油も準陰性であった。河合法を実施する日本皮膚衛生協会の追跡調査によると,準陰性と判定された場合,通常市販された商品がクレームを生じる可能性はきわめて低く,今回評価した1%濃度の精油についてはすべてその程度の弱い刺激性にとどまることが判明した。しかし,ゼラニウム精油に関しては3%で準陽性,5%においては陽性を示した。また,ティートリー精油に関しては3%と5%で準陽性を示し,オレンジ・スイート精油,サンダルウッド精油,ユーカリ精油およびペパーミント精油では5%濃度のみで準陽性を示した。以上の結果から,精油の刺激性には差があることが判明した。

キーワード

精油,ヒト皮膚,レプリカ法,安全性

一過性の精油環境が動脈スティフネスおよび血管内皮機能に及ぼす影響

著者名 三浦哉 杉野恵 越智玲衣
文献名 アロマテラピー学雑誌15(1)122-126

アロマテラピーは,ヒトの生理/心理機能を改善するうえで多くの利点があるといわれているが,精油環境が動脈機能に及ぼす影響については十分に検討されていない。そこで本研究では,精油の吸入が動脈スティフネスおよび血管内皮機能に及ぼす影響を検討することを目的とした。被験者は11名の健康な成人男女(男性8名,女性3名)であり,彼らはダグラスバックを介して,通常の空気と精油を混合した気体(精油条件),もしくは通常の空気(コントロール条件)のみの気体をそれぞれ別の日に無作為順で30分間吸入した。測定の際には,仰臥位姿勢で上腕収縮期/拡張期血圧(SBP/DBP),上腕-足首間脈波伝播速度(ba-PWV),および血流依存性血管拡張反応(FMD)をそれぞれ測定した。その結果,試行前と条件時のSBP, DBP, baPWV, およびFMDの変化量(Δ)は,精油条件でそれぞれ-3.2±3.9mmHg, -0.9±4.0mmHg, -17.1±31.0cm・sec-1, 0.24±0.60%, コントロール条件で-0.1±4.1mmHg, 1.2±3.5mmHg, 7.5±27.7cm・sec-1, 0.05±0.32%であり,ΔSBPおよびΔbaPWVにおいて両条件間で有意な差が認められた。これらのことから,一過性の精油吸入は血圧および脈波伝播速度を低下させる可能性が示唆された。

キーワード

精油,動脈スティフネス,血管内皮機能,血圧