からだで覚えたことは、忘れない

私の役者人生のはじまりは、幼稚園の時に見たミュージカル『Annie(アニー)』。深く感動し、「この舞台に立ちたい!」と強く思ったことを覚えています。ダンスレッスンに通いながら3年ほどオーディションを受け続け、10歳の時に念願の初舞台を踏ませていただきました。子どもの頃『Annie(アニー)』に出たくて始めたタップダンスですが「TAP THE LAST SHOW」という映画のオーディションを受ける為に一時期離れていたタップダンスの練習を再開しました。メインキャストとして合格し、タップダンサーの役を演じるにあたって再び練習を重ねる中で、からだが覚えていたタップの感覚を取り戻す瞬間がありました。毎日欠かさずやっておられる方にはもちろん及ばない部分がたくさんありますが、子どもの頃に基礎をしっかり練習した事で、時間が経ってもからだがしっかりと覚えているものだな、と実感しました。

何を食べ、どう動くかで、からだは変わる

実は私、20代前半は「撮影前に少し絞った方がいいな」と事務所の社長に言われてしまうほど、パンパンな体型でした。そのため、食事制限など無理なダイエットをしたこともあるのですが、きつい割に効果を感じられませんでした。そのため「食べなくても痩せないなら食事制限はもうやめて、からだのためになる上質なものを楽しく食べよう! その分、動けばいいだろう」と開き直るように(笑)。からだを動かすことが楽しく感じられた頃からボディシェイプできたように思います。年齢を重ねたタイミングと合致したのかもしれませんが、「食べたものでからだは作られている。食べること、動くことがからだ作りのベースなのだ」と実感できたのは大きかったです。

ローチョコもグラノーラも、自家製がおすすめ

それから、食材や料理への興味がどんどん強くなっていきました。今では、夫や友人、仕事の仲間と食事する時間はもちろん、近所のファーマーズマーケットで旬の食材を探すことや、料理自体もとても楽しんでいます。実はマクロビやローフードも実践したことがあるのですが、特におすすめしたいのが、ロースイーツ作り! 痩せたいけれど、甘いものもおいしく食べたいって時ありますよね。ロースイーツは、酵素を多く含む生の食材の栄養価をなるべく多く摂れるよう、高温で加熱することなく作られたスイーツのこと。「お菓子作りには欠かせないと思っていたオーブンさえも使わずに、こんなに美味しいスイーツが作れるなんて!」と一気にその魅力にハマって、資格を取るほど夢中で勉強しました。ローチョコは酵素を壊さない温度(48℃以下)を保つことさえ意識できれば、材料を混ぜて冷やし固めるだけなので失敗もしにくいと思います。

朝食やおやつなどで人気のグラノーラも自分で作ってみると楽しいですよ。グラノーラ作りは毎回ミックスする材料や調味料を気分で変えているので、料理というよりは実験に近い感覚でも楽しめます。先日、「こぼれ梅」というみりん粕を甘味料として使ったグラノーラがとても美味しくできました。秋の気配を感じたくて柿のドライフルーツを入れ、みりんやみりん粕、アガベシロップやココナッツオイルを使いました。自家製にすると、自分好みの味わいに調整できるのも嬉しいですよね。

エシカルな習慣を、再び世界のスタンダードに

一方で、ロースイーツの材料を日本で買おうすると、高すぎるのが残念だと感じています。質素でも上質な食事を摂ることは健康にもつながり、多くの人におすすめしたいこと。それなのに、高価だからと手を伸ばしにくくなってしまうのは、とてももったいないですよね。私は海外に遊びに行った時には必ず、現地のファーマーズマーケットやオーガニックスーパーでロースイーツの材料をまとめ買いしています。ローカルなオーガニックスーパーに初めて訪れた時、ありとあらゆるものが量り売りされていることに衝撃を受けました。生鮮品などの食材からオイルなどの調味料、漢方やハーブティーの類まで、店内のほとんどのものが量り売りされていて、自分が欲しい分だけ買うことができる。環境配慮が一般常識的に浸透しているので、空容器を持参してその中に自分が使い切れる分量だけ買うという無駄のないライフスタイルがとても気持ちいいなと思いました。でもそれって実は、ちょっと前の日本でも普通の光景でしたよね? 空のお鍋を持って豆腐屋に行っていた、買い物かごを持って八百屋さんに行っていたなんて話も聞いたことがあります。ものを大切にする、無駄を出さないという意識がある文化は大切に継承したいなと思っています。オーガニックな食べ物を選ぶこととか、サステナブルな買い物の仕方を選ぶとかって、なぜか「おしゃれだね」「意識高いね」という印象を持たれがちですが、エシカルな選択は別に何も特別ではないはず。当たり前だねって認識がもっと日本で思い出され、再び一般化されるといいなと思います。私ももちろん勉強しながらですが、みんなで学び合いながら、少しずつそういうことを実践していきたいです。

意識的に思考をストップしてリラックス

汗をかくこともストレス解消にはいいですよね。毎日必ず湯船に浸かって汗をかくようにしていますし、通っている溶岩ヨガでは、驚くほど大量の汗をかくことでスッキリ。身体的にも、精神的にもデトックスになっていると感じます。溶岩ヨガのスタジオの中にいる時間は45〜60分くらいですが、喋らず無心になるのがポイント。からだって本当に面白いなと思うのですが、その間、芝居のことや気がかりな何かを頭で考えていると、全然汗がかけないんです。心とからだはつながっていますね。お風呂でもリラックスしている時の方が汗をかける気がします。つい考え事をしてしまう時は、目を瞑る。それだけでも、心がほっと休めるような気がしています。いまは外出などでの気晴らしも難しく、先の読めない不安で無意識にストレスを抱えてしまっている方も増えていると聞きますが、私は自宅でストレッチの習慣を取り入れたり、料理を楽しんだりと、ちょっとした日々の工夫で心もからだもヘルシーでいられるよう努めています。

目で見て、香りでも取り入れる植物のチカラ

引越しをきっかけに、自宅に植物を飾るようになりました。日々変化していく様から植物の生命力を感じ、エネルギーをもらっています。花が咲き、枯れていく過程まで見届けたいので、舞台の楽屋に届けていただいたお花なども、千秋楽にまだ咲いているものは軽く束ねて、ありがたく持ち帰らせていただいています。実はアロマテラピーに携わる仕事をしている母が、ナチュラルビューティスタイリスト検定への受験を勧めてくれたのですが、受験を通して、植物やアロマテラピーに関する話題が増えたことも嬉しいですね。

それまでは母がプレゼントしてくれていたブレンドアロマのことも詳しくはわからなかったのに、今は少し知識を得たことで、「健康を守ろうというメッセージで、抗菌作用がある精油をブレンドしてくれたのだな」などと、その想いを想像できるようになりました。どんな植物にどんなチカラがあるのか、なんとなくでもいいので知るということは大切だし、面白いなと感じます。基礎知識があると、アロマの感じ方ひとつとっても健康状態を図るバロメーターとなり、自分自身のことをよりよく理解する手立てになります。

舞台の袖で、意識的に深い呼吸を

さらに、呼吸がすごく大切だと改めて知ることができたのは、仕事にも生かしています。本番前、集中力を高めるために意識的に呼吸をするようになりました。袖から舞台へ出る瞬間には、息をふっと吸って吐く、それからサッと踏み出す。緊張しやすい私にはとてもいいルーティンとなっています。ナチュラルビューティスタイリスト検定の勉強を通して、からだの仕組みと心との関わりをあらゆる視点で基礎的に学べたことは、これからの役者業にも大きなヒントになりそうです。これからも植物のチカラを上手に取り入れながら、からだをフルに使ってその時々の興味を深め、仕事もプライベートも豊かな人生を目指していきたいです。