決まった時間に、
みんなでお茶を囲む習慣

私の母の実家は農家でした。そのため、昼の食事以外にも10時と15時には大人たちがお茶を囲み、ひと休みする習慣のなかで育ちました。農作業は想像以上に重労働なので、休憩を取りながらでないと大変です。自然な流れで、小学校高学年の頃には、家族にお茶を淹れることと季節の果物を剥くことが私の仕事になりました。母は植物に関する知識が深かったので、私が肌荒れした時にはドクダミ茶を、受験で緊張が続いた時にはカモミールティーを淹れてくれたり。お茶を通じて植物の力を摂り入れることが当たり前の環境で育ったことは、とても幸せだったと思います。

浸草水。その美しい色と、植物本来の香り

農学部を卒業し、大学院でも植物にまつわる研究をしていた経験から、転職して北麓草水を展開している松山油脂に入社した際、研究開発部に配属となりました。現在は商品企画・販売促進を担当していますが、研究開発部で様々な植物原料に触れながら製品開発に携わった経験は大きな財産となっています。特に印象深いのは、化粧水づくりのワークショップのために複数種用意した「浸草水」。浸草水は北麓草水が大切にしている自社製の薬湯で、富士山の伏流水をろ過した純水に、乾燥させた植物を浸し有用成分を抽出したもの。植物それぞれの個性がそのまま出るので、どの植物でつくったかによって、色も香りも変わります。子ども時代に遊んだ色水を思い出す色合いも美しいのですが、私が強く惹かれたのは独特の香り。精油とはまたちょっと違う、植物全体のふんわりと自然な香りがたまりません。お客様自身がお好みの浸草水をブレンドしてオリジナル化粧水を作るワークショップでは、ブレンド具合によっても様々な香りが生まれ、改めて植物の香りの世界は奥が深いと感じました。

 

大好きなハーブティーは、毎日気軽に取り入れて

松山油脂に入社する前に、個人的に興味があったメディカルハーブの勉強をしました。植物成分がどのように人の身体に作用するのかというメカニズムを学ぶことで、自分にも人にも役立つ知識を身につけておきたいと考えたからです。それ以来、ガラスの空き瓶にあらゆるハーブをストックしておき、その日の気分や体調によってハーブをブレンドしてハーブティーを楽しむようになりました。
現在子どもが3歳なのですが、出産してからはハーブをブレンドする時間的な余裕をもつことが難しくなってしまい…。最近はもっぱら、ティーバッグでささっとティータイムです(笑)。ハーブをブレンドする一手間も大好きな時間だったのですが、完璧を求めるとかえってストレスになるので、好きな銘柄のティーバッグを複数用意しておいて、その日の気分で飲み分けています。それだけでも十分に気分転換できます。

子ども目線で発見する、植物のある景色

3歳の息子は、外遊びが大好き。天気がいい日は公園に行くことが多く、その時は麦茶などを入れた水筒を持参します。公園の木陰で飲むこともありますし、帰りにテラスのあるカフェで息子とお茶をすることも。好きな景色が新たにひとつ、ふたつと増えていくようで、とても楽しい時間です。
また、帰宅時の手洗い習慣も、子どもができてから一層大切にするようになりました。子どもが自分ひとりで洗い流すことを考えると、やはり泡タイプの方が便利。ですが泡タイプのハンドソープは選択肢が少なく、無香料タイプは味気ないし、合成香料が入っているものはその香りが気になって、なかなかお気に入りが見つかりませんでした。そんな時に出合ったのが、天然精油で香りづけされた泡タイプのハンドソープ。天然精油の香りがふわっと香ると、「自宅に戻ってきたな」とリラックスした気持ちになれるのが嬉しく、子どもも楽しんで洗ってくれています。

身体を動かすと、心もよろこぶ

もともと植物に関する知識が多少はあったこともあり、ナチュラルビューティスタイリスト検定の内容は、とっつきやすいものでした。さらに、健やかに暮らしていくためのヒントがとてもわかりやすい言葉でまとめられているのが魅力的だと思いました。ワークショップを行う際に、伝え方の参考にさせてもらうこともあるくらいです。
検定を受験して一番変わったのは、「自分の身体をもっと動かそう」という意識。植物を取り入れると身体に良いことは知っていたし、実際、できる範囲で取り入れている意識もありました。ですが、身体を動かすことで代謝を良くしたり、睡眠の質を高めることはできていなかった、と気づきました。日々の暮らしでまとまった運動時間を確保するのは難しいので、子どもが朝起きる前の10分間と決めて、さっと近所を歩いたりしています。見慣れた並木道が季節によって少しずつ変化していく様子にはたくさんの発見があり、ひとり時間の楽しみとして習慣化しつつあります。

学びは、元気で余裕があるときにこそ

母が介護に直面しているのですが、その忙しさと気苦労とで疲れが溜まっているな、と感じる時期がありました。本来はお茶の時間をゆったり楽しむ母なのに、「今はそんな余裕ないから」と言われてしまったことも。それでもお茶を淹れて、「ちょっとだけ、休もうよ」と一緒にひと休みの時間をつくったら、少し心の落ち着きを取り戻せた気がしました。その時、お茶で身体と心を整える習慣をもともと持っていたから、すっと落ち着くことができたのかな、とも思いました。

ハーブなど植物の力を取り入れるライフスタイルを学ぶことは、「机の上のお勉強」という感じよりも、「どんな時も健やかに生きていくための、ヒントや方法を身につける」ことに近いと思っています。母の例もそうですが、目の前で大変なことが起こっている最中に、新たな知識を得て実際に取り入れていくことは難しい気がしています。ただ、元気な時に身につけていた習慣を、大変な時に思い出してやってみることはそんなに大変ではない。それによって、心も身体も落ち着きを取り戻すことは確かにある、と思うんです。だからこそ元気な時に、こういったライフスタイルを学んで習慣化できると素敵だし心強いな、と思うようになりました。

毎日、美味しい。毎日、心地よい。

前職は食品会社で働いていたのですが、その時にも「ハレの日の料理もいいけれど、ちょっと美味しい料理が毎日食べ続けられることを大切にしたい」と思っていました。一日一回は好きなハーブティーをゆっくり飲む、お風呂上がりには植物の香りが広がる化粧水でスキンケアする、なども同じ感覚です。大げさなことではないけれど、積み重ねることで豊かな生き方に繋がることを大切にしたいと思っています。そういう日常の豊かさは、「今日もがんばろう」という健やかな明るさを自然と湧き出させてくれるものだと思うんです。
お茶を淹れることって、別に何も特別なことではないですよね。誰でもできる簡単なこと。それでも、毎日飲み慣れたお茶が特別に美味しく感じられて、なんだか胸を打つ。心に深く沁み入る日って、人生にはある気がします。だからこそ、そんなお茶時間がある暮らしを、これからも無理なく続けていきたいな、と思っています。