ヴァイオリンとともに生きていく

ヴァイオリンを始めたのは3歳になる前。始めた当時の記憶はほとんどありませんが、「私はヴァイオリンとともに生きていく」と感じたときのことはよく覚えています。小学校1年生のとき、サントリーホールで行われたヴァイオリニストの巨匠イツァーク・パールマンの演奏を聴きに行きました。会場全体に特別な一体感が生まれる様子に深く感動し、「なんてすばらしいんだろう。苦しいことや悲しいことがあったとしても、会場の皆さんが笑顔になって帰っていく。音楽家はそれができる職業。自分の好きなヴァイオリンで、私も彼と同じように聞いてくださる方々を幸せに出来たらいいな」と、そこで自分の道を確信しました。

小さい頃からコミュニケーションがあまり得意ではなかったのですが、自分の中の素直な気持ちを音に託して伝えることは好きでした。心の奥底で何層もベールに包まれているような一番繊細な感情があって、普段はなかなか言葉にして言い表すことはないけれど、音楽だったらそれを表せる気がしました。お客さまももしかしたらそのような奥底にある繊細で柔らかな感情を受け取ってくださっているのかもしれないですね。それらが共鳴して作られていく空気感、言葉を交わさなくても通じ合えるような感覚。これが、私にとって音楽の魅力です。

その一瞬にすべてをかける

クラシック音楽は再現芸術。作曲家が楽譜に込めた思いや意図をいかに読み取るかが、最初の大事な作業です。彼らが生きていた時代背景や歴史、ときには私生活や感情まですべてに触れようと試みます。
次に、曲に込められた物語や感情が自分の人生経験の引き出しにないかと探ります。もしない場合には、まだ見ぬ世界に探しにいくことも。例えば、小説や絵画、映画などもインスピレーションになりえます。疑似体験からもヒントを得て、一つの曲のイマジネーションを作り上げていきます。

その後は、練ったアイディアや考えを煮詰めて、それを表現できるように、演奏会まで何十時間…またはそれ以上の時間、練習を繰り返します。そして演奏会本番では、120%の力が出せるように全身全霊で臨む。アスリートが大会のその一瞬にすべてをかけるように、音楽家もひとつひとつの演奏会に命をかけていると言っても過言ではありません。

最良の演奏のためのコンディションづくり

演奏会の一瞬に全力を出し切るためには、心身ともに健やかであることがとても重要です。10年ほど前から、食事、運動、睡眠と、限られた時間ではありますが、気をつけていこうと心がけるようになりました。特に普段の生活で自己免疫力、治癒力を上げていくことが大切だと感じています。
学生のころは、風邪をひいたら薬を飲んでいましたが、抗生物質でお腹の調子が悪くなったり、肌が荒れたりしてしまうことがありました。西洋医学は対処療法だけれど、東洋医学は不調の根本にアプローチするという考え方に触れたこともあり、そうであれば本当にナチュラルなもので不調の源を治せば、薬を使わなくてもいいんじゃないかと思うようになったんです。それからは、ハーブティーやよもぎ蒸しに助けてもらっています。喉が痛いときや風邪をひいたときにも、天然の抗生物質といわれるプロポリスや殺菌作用があるといわれているグレープシードエキスなどを使っています。

小さなことでも、継続は力になる

仕事がら海外に行くことも多いのですが、ヨーロッパでは野菜やハーブティー、化粧品など日常生活にオーガニックが根づいています。今では日本で買えるオーガニック製品も増えてきたと思いますが、私がオーガニックについて勉強を始めた10年ほど前は、日本は随分と遅れているような印象を受けました。これからさらに、日本でもオーガニック製品が手に取りやすくなるといいなと思っています。

多くの人が日常的にオーガニックを選ぶことは、環境に優しい農業を支援することにもつながりますよね。だからこそ野菜を買う場合は無農薬、自然栽培のものを選び、農家さんから直接購入することもあります。農薬を極力使用しない農家の方は、近所の方から「そちらから虫が飛んできて困る」と言われるなど、肩身の狭い思いをしていることもあると聞きました。私一人ができるのは微々たることですが、少しでも応援できればという気持ちで無農薬野菜を購入しています。
それでも、完全無農薬の野菜はなかなかないので、農薬や展着剤を落とすことができる電解水で洗うなどして、添加物や加工食品はなるべく避け、からだに良いものだけを摂ることを意識しています。演奏会から帰宅するのが遅い時間になることも多いのですが、それでも食事だけは自分で作ろうと心がけています。

本当に納得したものを使う

肌につけるのも、ナチュラルなものです。例えば、無農薬の月桃のみで作られている月桃ローション。どうしても作り手の想いや製法が知りたくて、沖縄の生産者の方を訪ねました。通常、蒸留水は水蒸気を使って蒸留されていますが、こちらは水を一切使わず月桃の茎と葉の絞り汁で蒸留する特許製法でつくられます。防腐剤が入っていないのに約10年は長持ちするそうで、飲んでも目に入れても大丈夫だし、花粉症には点鼻薬のようにして使えます。
伊豆大島の椿油は、非加熱製法で作られたものを選んでいます。一般的な椿油はベタつきや独特の香りが気になりますが、これは驚くほどサラリとしていて浸透力が違うんです。使った後のなめらかさも気に入っています。

最近は、週に2、3回のヨガも習慣にしています。終わった後の爽快感はもちろんですが、自分の意識を内側に向ける時間を持てるようになったことで、今日の呼吸は浅いな、今日はからだのこの部分に違和感があるなといった、ちょっとした不調にも気づきやすくなりました。また体幹が鍛えられるので、演奏するときに軸がブレにくくなったのも嬉しい変化です。

自分の心地よい状態を保つ

いつも自分の中のベストの状態で演奏会に臨みたいので、ナチュラルなアイテムを選ぶことで、心身ともに心地よい状態を保てるように心掛けています。心身のバランスが崩れそうになったときは、植物のチカラが私を本来の心地よい状態に戻してくれます。
演奏会では交感神経が圧倒的に優位になるので、以前は興奮状態で朝方まで眠れないこともあったのですが、ハーブティーや精油、ヨガの瞑想によって、最近はすんなりと眠りにつけるようになりました。

ナチュラルビューティスタイリスト検定を受けようと思ったのは、今まで独学で学んできたこと、自分が助けられてきたことに、改めて着目してみようと思ったのがきっかけです。植物のチカラを生活に取り入れて、より心地よく、生き生きと健やかに毎日を過ごす人が増えたらいいですよね。この検定ではその基本を学べるので、最初の一歩としてとても良いと思うんです。私の職業は音楽家ではありますが、これからは自分の生きる使命のひとつとして、健やかなライフスタイルの発信もできたらいいなと考えています。