ケータリングを通して世界観を届ける仕事

ご指定の場所にフードメニューをお持ちし提供するケータリング事業が、私のお仕事の中心です。アパレルブランドの新作発表会であれば、そのコレクションのテーマに即したメニューをご提案します。最近は、ケータリングだけでなく、フラワーディスプレイ、テーブルセッティング、ノベルティのご用意なども含めた、トータルコーディネイトをお任せいただくことが多く、ブランドの世界観をいかに表現するか、ご提案させていただいています。というと、スマートなお仕事といった印象を与えてしまうかもしれませんが、実際には連日の事前準備が細々と必要ですし、当日の現場はセットアップから撤収までずっと体力勝負。少数精鋭のスタッフに、毎回とても支えられています。

自分を元気にするためにはじめたジュース作り

スムージーやコールドプレスジュースに目覚めたきっかけは、30代後半で感じた自身の体調変化でした。当時はケータリングを行っている飲食店で働いていました。日中は思いっきり働き、仕事が終わると夫や友人、仕事仲間とお酒を嗜むという、比較的ハードな生活。日々は楽しく過ぎていくけれど、婦人科系のトラブルを抱えるようになってきて、「好きなお酒を長く飲み続けるためにも、ライフスタイルを見直すタイミングなのかもしれない」と考えるようになりました。まずは、自分自身の食生活としっかり向き合うことから始めました。身体を作る土台はやはり、食べ物だと思ったからです。根が凝り性なので、何十通りものレシピを考えては、スムージーやコールドプレスジュースを作って飲んでいました。それを続けて3ヶ月くらい経った頃に、からだのリズムが整い、ホルモンバランスの乱れによる婦人科系の悩みが少しずつ好転していく実感がありました。

日々をカラフルにする、ジュース作り

ジュース作りを続けていると、新鮮な野菜と果実のカラー、その鮮やかさが日常的に目に飛び込んでくるんです。緑、ピンク、赤、黄色、紫。私にとって、その視覚的なエネルギーは想像以上に大きなものでした。飲んで美味しいのももちろんなのですが、目でも美味しい。全身がしあわせな五感で満たされ、エネルギーを補給している実感がありました。その実感をいろいろな方と共有したいと思うようになり、自らケータリング事業をスタート。「五感」をテーマに掲げた「THE FIVE SENSESBAR」というジュース専門のバーも立ち上げました。

仕事でも人間関係でも、現代生活にはメンタルの調和が乱れるきっかけってたくさんありますよね。だからこそ、日常の中に色鮮やかな自分だけの世界を作ることって大事だなと考えています。きっと誰しも、鮮やかな色を見ているだけでポジティブになれるはず。それは何も大げさなことではなく、数種類の新鮮な野菜や果物を切って眺めてみるだけ。それをどう捉えるか、というマインドセットだけですよね。いろいろなお客様と会話する中でも「野菜や果物の色がもたらすパワーと、現実的な食物そのものの栄養価」の両面が現代社会では求められていると確信していきました。

特に女性におすすめしたい食材は、ビーツ!

Instagramライブなどでも、「ビーツと生姜とリンゴとレモン」の組み合わせをおすすめしています。スムージーにしてもスロージュースにしても美味しいですし、何よりビーツは女性に必要とされる栄養素の宝庫。生のままのビーツを皮付きでカットして、他の食材と一緒にジューサーに入れるだけだから簡単ですよね。ビーツは6〜7月、11月〜12月と年に2回旬があるので、スーパーで見かけたらぜひお試しください。

カカオフリークが一粒で満足できる、ローチョコレートを

最近、オリジナルのローチョコレートを褒めていただけることが増えていて、とても嬉しく思っています。実は私、生粋のチョコレート好き。子供の頃は、母が止めても鼻血を出すまで食べ続けていたと聞いています(笑)。毎日食べていたのですが、ある日お世話になっていた婦人科の先生に「チョコレートのカカオ成分を過剰に摂取していることも、いまの不調と関連しているかもしれないよ」とアドバイスいただきました。その一言をきっかけに、市販のチョコレートを控えようと決意しました。

とはいえ、チョコレート好きとしてはカカオ摂取自体をやめることはできない。たくさん食べられないなら、一粒で満足できるほどおいしいチョコレートを作ろうと思ったんです。実はローチョコレートってたった3つの材料で作れるんですよ。アガベシロップ、カカオパウダー、カカオバターの3つです。これらのお気に入りを厳選し、好みの配合比率を探る。さらに、口溶けやカカオの香りの立ち上がりを大きく左右する、調温作業(テンパリング)を何パターンも試しました。研究家気質でどんどん作ってしまうのですが、もちろんそれをすべて自分で食べていては本末転倒なので(笑)、試作を周囲の方々にお配りしていたんです。それがきっかけでオーダーいただき、現在ではいろいろな方からご注文いただけるようになりました。

「うれしい甘み」は植物の恵み

ロースイーツは、色が地味になりやすかったり、作る側にある程度の知識が必要だったり、材料を揃えるにも手間がかかるもの。決してクイックとは言えないですよね。ただ、本質的な豊かさという点では非常に魅力的だと思います。ロースイーツでは白砂糖を使わない代わりに、甘さを出すためにデーツなどを使います。デーツは、ナツメヤシという植物の果実。これを潰してペースト状にしたものを使うのですが、舐めてみると、人間の嗅覚までも刺激するような深い味わいがあることに驚きます。植物の生きた甘みがじんわりと、からだを隅々まで満たしていく。味わうほど、からだにいいことをしているという満足感も生まれます。その上で私は、ロースイーツ にエディブルフラワーを組み合わせることをご提案しています。天然の甘みをいただくことに加え、私がテーマにしている「色を食す」ことにもつながる。ジュースと同じ発想ですが、見た目と中身の両方のパワーを同時にいただけるってすごいことだと思うんです。デコレーションされたお花って見ているだけでも嬉しくなりませんか。瞬間的な嬉しさと何げない幸福感の蓄積が、女性には大切だと考えています。

植物は知れば知るほど、取り入れるほど面白い

私がナチュラルビューティスタイリスト検定を受験したのは、新型コロナウイルス感染拡大状況下のいわゆる「自粛期間」でした。ケータリングのお仕事も控えざるを得ない状況だったので、兼ねてから学びたいと思っていた植物の勉強にしっかり向き合おうと思いました。そこで得た知識は、これからのフードとフラワーのスタイリングに生かされていくと思います。植物それぞれの効果効能をより深く知った上で、素敵なイメージを表現するというワンランク上のご提案を差し上げられるようになりたいですね。実は個人的な楽しみとして、寒くなって乾燥が気になる季節になると、自分好みの精油を配合した保湿バームやお風呂で使うアロマバスソルトを手作りして使うなど、日々の暮らしに植物の力を取り入れることはもともと行っていました。ナチュラルビューティスタイリスト検定の勉強を経て、そういった営みの幅が広がり、専門的な知識を得られたことも面白かったです。これからも、植物や野菜・果物の色や香り、成分的なパワーなどをあらゆるシーンで取り入れて、私らしく気負わないヘルシーライフを楽しんでいきたいと思います。