アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.6 No.1 (2006)

総説

精油成分と脳内神経伝達物質受容体の相互作用

著者名 松浦晶子
文献名 アロマテラピー学雑誌6(1)1-8 (2006)

美容から医療の幅広い分野において利用されているアロマテラピーにおいて植物から抽出される精油は必要不可欠な役割を果たしている。アロマテラピーの歴史は紀元前のインドや古代エジプト時代にまでさかのぼるといわれる。その精油には多様な身体的、心理作用が報告されているがその作用機序についてはあまりしられていない。本報では精油と脳内の各種神経伝達物質の受容体との相互作用の観点から精油の作用について考察した。マウスの行動実験において抗不安作用などの生理心理的作用がみられたrose oil,lavender oil,peppermint oil,chamomile oilについて、精油の含有成分のin vitro実験系で示された受容体への結合能の評価から作用機序について考察した。

キーワード

精油、脳内神経伝達物質受容体、生理心理的作用、rose oil

原著論文

運動を行っている人のセルフアロマテラピーとリートメントの主観的評価

著者名 倉石愛子、原田崇美恵、庄司倫子
文献名 アロマテラピー学雑誌6(1)9-17 (2006)

本研究では運動している人に自分自身で行うアロマトリートメント(以下,セルフアロマトリートメントと記す)をしてもらい、精油なし・マジョラム・ラベンダー・レモングラスの精油で5項目についての主観的評価を検討した。どの精油においても「リラックス」が最も高く、以下「温かい」「軽い」「関節の動き」「集中力」の順となった。アロマテラピーでの主役ともいうべき精油の効果を探るには精油なしのトリートメントとの差が必須である。精油特有の作用はマジョラム1%、ラベンダー1%、レモングラス0.75%の希釈濃度においては精油なしに対し対象者全体では、レモングラスで「集中力」が高まった。精油に嗜好性がある場合はマジョラムでは「リラックス」、レモングラスでは「軽い」「関節の動き」「集中力」が高まった。またアンケートでは94%の人が香りがあったほうがよいとしており、今回調査した5項目以外でも精油は何らかの影響を及ぼしていると考えられた。運動する人が継続的にセルフアロマトリートメントをすることは一般的にいわれるタッチングなどオイルトリートメントとの相乗効果だけでなく精油によってわずかながら特有の作用も主観的に得られることが示された。特にマジョラム、レモングラスは状況(時間、環境、農度、嗜好、慣れ)などを考慮すれば運動する人が使用するのに適すると思われる。

キーワード

運動、セルフアロマトリートメント、マジョラム、ラベンダー、レモングラス

アロマテラピーに用いられる芳香物質のHIV感染に及ぼす影響  -MAGIC-5細胞を用いたin vitroでの検討-

著者名 長縄 聰、早川 智、相澤志保子、清水一史、北村勝彦、本多三男、陳 旺全、鄭 瑞棠
文献名 アロマテラピー学雑誌6(1)19-25 (2006)

 AIDSは新興感染症の中でも致命率の高い疾患であり、現時点では、HIV感染やAIDS発症を確実に予防する方法がない。近年HAARTの導入により、予後は改善しているが、長期服用による副作用や耐性の問題がある。そうしたなか、代替医療にはAIDS発症を遅らせたり、日和見感染を予防したり、食欲を増進させるなど全身状態の改善効果が報告されている。我々は、アロマテラピーに用いられる芳香物質がHIV感染にどのように効果があるかin vitroで検討した。
 方法として35種類のエッセンシアルオイルおよびチンキ剤をMAGIC-5アッセイ法によって検討した。その結果、使用した35サンプル中7サンプルに細胞毒性濃度と比較して10~100倍希釈した低濃度でHIV感染阻害効果を確認することができ、この阻害効果が細胞毒性によるものではないことが判明した。その中でもベルガモット、ミルラ、レモン、ローズオットーおよびレモングラスでは特に高い阻害効果が見られた。興味深いことに、感染阻害作用には単純な濃度依存性がなく、特定の濃度で最大限の感染抑制が見られた。
 結論としてアロマセラピーに用いられるエッセンシアルオイルやチンキ剤の一部にHIVの感染を抑制する作用が認められ、従来から知られている抗HIV剤とは異なる作用機序による可能性や複数の感染抑制活性物質や拮抗物質が共存するのではないかという可能性が示唆された。

キーワード

HIV、AIDS、アロマテラピー、MAGIC-5

琥珀お香と沈香により異なる随伴陰性変動及び心拍変動を示した一例

著者名 一之瀬充行、砂子拓也、澤 和也、薗田徹太郎
文献名 アロマテラピー学雑誌6(1)27-36 (2006)

琥珀は、4500万~1億年前のマツ科植物の樹脂や樹液が化石化したものである。現在、琥珀は宝飾品や装飾品として使われているが、古代より洋の東西問わず癒しや健康増進のために使われてきた。琥珀をお香のように燻らせた時に、生体にいかなる生理作用があるかを調べるために、脳波随伴陰性変動(CNV)及び自律神経活動を解析した。用いた琥珀は、岩手県久慈産である。琥珀のお香の刺激により、23ヶ所の脳波測定電極のうち、19ヶ所でCNV面積が増大した。一方、お香として良く知られる沈香の場合には、琥珀に比べCNV面積の増加はわずかであった。CNV試行中に、呼吸数と心拍が増加した。これらの指標は、琥珀お香の刺激中に変化があった。心拍変動の高周波成分(副交感神経の活性)の減少が、琥珀お香の刺激中に抑制された。CNVは期待感、意志、動機や集中力の程度を表し、また副交感神経活性化はリラックス状態を誘導するとされている。以上の結果は、本研究の被験者において琥珀お香が生体における期待感、意志、動機や集中力を促進し、また琥珀お香の最中にはCNVなどのストレス不負荷を軽減することができたことを示唆した。

キーワード

琥珀お香、脳波、随伴陰性変動、自律神経活動

研究ノート

Clove Oilの微生物生育阻害について

著者名 野田信三、坂本晴香、岡崎 渉
文献名 アロマテラピー学雑誌6(1)37-40 (2006)

Clove Oilが微生物生育阻害に与える影響について検討した。本実験ではClove Oilの他にその主成分であるEugenol,Menthyl eugenol, Iso eugenol, Methyliso eugenol and Caroyphylleneも使用した。試験用微生物としては、皮膚常在菌2種(Candida albicans,Saccharomyces cerevisiae)、界面活性剤由来菌4種(Corynebacterium sp.G01、Bacillus sp.G21、Enterobacter sp.G42、Serratia sp.A3)、大腸菌IFO3972と枯草菌JCM2449を用いた。精油の香りすなわち揮発成分については、寒天培地に各微生物をそれぞれ塗布し、揮発成分が直接当るようにして培養した。また、精油そのものの影響についてはペーパーディスクを用いた溶液法により評価した。さらに、Clove oilの懸濁液についても試験した。その結果、蒸気法、溶液法のいずれにも皮膚常在菌の生育阻害が認められた。懸濁液に対しては、皮膚常在菌に加えて、Escherchia coliIFO3972,Serratia sp.A3およびCorynebacterium sp.01に影響を及ぼした。これらから水に芳香成分が懸濁し、微生物に接触しやすい場合において微生物の生育阻害を行う事が示唆された。

キーワード

Clove Oil、芳香、微生物生育阻害、皮膚常在菌、界面活性剤由来菌