アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.11 No.1 (2011)

原著論文

パルマローザ蒸気による足白癬治療の試み

著者名 服部尚子 井上重治 高橋美貴 安部茂
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)1-11

 パロマローザ,ゲラニオール,ティートリー,オレガノ,ヒノキチオールは白癬菌Trichophyton mentagrophytesに対して,寒天気体法と密閉箱気体法で強い蒸気活性を示した。このなかで,靴足型モデル法で活性が強く且つ足浴で使用した実績のあるパルマローザを臨床試験に選択した。精油の気体活性はインソールの材質と適用方法に大きく影響され,表面が金属ないしガラスでないと抗菌活性を示さないことが判明した。4名の足白癬患者に1日1回新鮮なパルマローザ液を添加したインソールを着用して1回5日間を1クールとして,予備的な臨床試験を行った。角化型足白癬は,1クールで全例が菌陰性化したが,趾間型は2クールでも57%しか陰性化しなかった。環境中への患部からの白癬菌の排出は1日の蒸気曝露で完全に抑制された。気体療法で治癒しないか再発した3足について5%パルマローザジェルを2週間塗布すると菌が陰性化した。

キーワード

気体療法,パルマローザ,足白癬,水性ジェル

認知症の周辺症状(BPSD)に対するティートリーオイルの効果

著者名 桜井邦彦 田中秀明 渡邉由佳 星野雄哉 高嶋良太郎 斎藤正子 平田幸一
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)12-16

 本研究では,テルピネン-4-オールが多く含まれるティートリーオイルを用いて,アルツハイマー病(AD)患者へ与える効果を嗅覚機能検査・心理検査および脳波を用いて検討した。対象は本研究の同意の得られたADならびに軽度認知障害(MCI)患者12名。2カ月にわたり,ティートリーオイルを用いた芳香療法行った。嗅覚機能は,においスティックによるにおい判別能検査をもちいた。認知機能検査としてMMSE,FAB,行動学的な評価としてBehaveADを施行した。脳波はFFT解析によりアロマ投与前後の変化を検討した。AD・MCIともににおい判別機能が低下していた。また,アロマ使用後に,においの判別,BehaveADのスコアの改善傾向が認められ,FABは改善が認められた。FFT解析では,アロマテラピーの継続後β1・β2帯域の有意な低下を認めた。芳香療法により,MMSEの改善はなかったが,FABの改善や脳波の変化がみられ,アルツハイマー病治療薬である塩酸ドネペジルと同様の機序のアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つティートリーオイルが,認知症患者の高次脳機能に影響を及ぼし,特に前頭葉機能を高める可能性があることが示唆された。

キーワード

アルツハイマー病,軽度認知障害,脳波,アロマテラピー,ティートリー

口腔周囲筋の緊張緩和とリラクセーションにおけるアロマテラピートリートメントの有効性について

著者名 中村真理 柿木保明 北村知昭 吉岡泉 椎葉俊司 土生学 富永知宏 寺下正道 榊原葉子 上森尚子 唐木純一 松崎友祐 諸冨孝彦 永吉雅人 木尾哲朗 尾崎由衛 福田仁一
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)17-24

 近年,補完代替療法の一つであるアロマテラピーの医療現場への導入が進められている。今回,頭頸部に対する20分間の統一された手技で行うアロマテラピー・トリートメントが歯科口腔領域における治療後に残る不定愁訴や慢性疼痛等に対して有効であるか否かを調査した。九州歯科大学付属病院専門外来での治療で不定愁訴や慢性疼痛等を訴えた患者を被験者とし,アロマテラピー・トリートメント施術前後にアンケート調査,および各種測定(フェイススケール,Visual anarogue scale,唾液アミノラーゼ,筋硬度)を行った。その結果,歯科領域における不定愁訴を持つ患者の不快症状の緩和と精神的なリラクゼーションにも有効な方法であることが示唆された。

キーワード

アロマテラピー・トリートメント,口腔周囲筋,リラクセーション

精油を用いたアートセラピー「アロマコラージュ療法」の開発‐フレグランスおよびコラージュ作品の検討

著者名 福島明子
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)25-40

 本研究では精油を用いてフレグランスを制作し,その香りをコラージュ作品で表現する新しいアートセラピー「アロマコラージュ療法」を考案し,121名に実施し,(大学生・大学院生64名,社会人57名),作品の分析をとおして効果の検討を行った。作りたいフレグランスのイメージ・使用した精油とコラージュ作品,フレグランスとコラージュ作品のタイトルの間に関連がみとめられた一方で,コラージュ作品におけるイメージの現実化,具現化もみとめられた。約9割が作業やイメージの楽しさ,イマジネーションの広がり,香りの効果,香りの視覚化,香りとコラージュ作品の関連の面白さ,リラクセーションへの相乗効果を理由に二つセットで制作するのがよいと回答した。またフレグランス,コラージュ作品ともにパーソナリティ特性との関連がみとめられた。以上のことから,アロマコラージュ療法ではフレグランス制作からコラージュ制作までひとつのセラピーとしてみとめられた。以上のことから,アロマコラージュ療法ではフレグランス制作からコラージュ制作までをひとつのセラピーとしてとらえることができ,フレグランスの香りをコラージュ作品で視覚化することでイメージ喚起がより活性化されることが示唆された。

キーワード

アロマコラージュ療法,アートセラピー,精油,フレグランス,コラージュ作品

アロマテラピートリートメントががん患者の睡眠障害と疼痛に及ぼす影響

著者名 荒井春生 植田麻実 山田和夫 白土辰子
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)41-51

 本研究では,外来でがんの治療と向き合っている患者を対象に,彼ら自身に心地良いと感じる精油を選択してもらい,アロマテラピートリートメントを実践した。対象者自身が精油を選択し,アロマテラピートリートメントを受ける行為が,睡眠と疼痛の緩和にどのような影響を与えるかについて3つの点で検討した。1つ目はがん患者自身が心地良いと感じた精油を選ぶことである。2つ目はハミルトンうつ病評価尺度を用いた睡眠障害の変化である。さらに3つ目は、疼痛評価尺度を用いて疼痛の変化を評価した。
 結果では,対象者が男性8人,女性20人の計28人,年齢は,45歳~81歳であった。また男性の平均年齢は70.0歳,女性は62.1歳であった。外来でがんの治療を受けている患者は,男女ともに柑橘系のグレープフルーツ精油を心地良い香りと感じ,選択した割合が高かった。さらに,がん患者が自分で心地良いと感じた精油でアロマテラピートリートメントを受けた夜は,リラクセーションが促進され,睡眠障害の改善と疼痛の緩和に効果を認めた。がんの治療は,患者自身の選択肢が限られている厳しい治療方法である。このような状況で,がん患者が自分で心地良いと精油を選択する行動は,患者の自己効力感を高め,精神的な不安を軽減させ,睡眠障害と疼痛の改善に良い影響を与えていた。

キーワード

がん患者,睡眠障害,疼痛緩和,リラクセーション,アロマテラピートリートメント

事象関連電位P300成分を用いた各種香りの認知機能に与える影響と可能性

著者名 飯野弘子 宮島美穂 原恵子 太田克也 松島英介 松浦雅人
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)52-57

 香りはストレスの緩和や仕事の能率向上に寄与することが知られ,代替療法の一つとして普及している。今回,20人の健常成人(年齢34.3±7.5歳,女性9人,右利き18人)を対象とし,グレープフルーツ,ラベンダー,イランイランの香りが事象関連電位P300成分に与える影響を検討した。
 主観的評価による好感度に関しては,グレープフルーツがコントロールやラベンダー,イランイランより有意に高かった。パフォーマンスは,コントロールと香りの4群間において,有意差は認められなかった。P300振幅は,すべての香りにおいてコントロール条件に比べ,有意に低下していた。三つの香りの相互の比較では,イランイランがラベンダーに比べ,有意に低下していた。P300潜時には差がなかった。P300振幅の結果と主観的評価の相関は低かった。
 今回の結果より,香りによるリラックス効果がP300振幅の低下と関連したものかもしれない。香りは,主観的,心理的に評価されることが多かったが,生理的指標とは必ずしも一致しない。とくに認知機能における香りの脳への影響を評価するためには,神経生理学的検査が必要であると考えられた。

キーワード

P300,香り,グレープフルーツ,ラベンダー,イランイラン

研究ノート

ブレンド精油の微生物発育阻止作用に及ぼす相乗効果について

著者名 和田真理
文献名 アロマテラピー学雑誌11(1)58-62

 植物各部より主に水蒸気蒸留法で抽出される精油は,鎮静作用,抗菌作用,などの多彩な効果を得ることを目的にアロマテラピーの材料として用いられている。精油の抗菌作用については抗菌スペクトルが広いこと,揮発性や皮膚への浸透性が良く,適応が容易であることなどから様々な現場での活用が期待されている。その中で精油をシューズスプレーとして活用することを目的として,靴の中の異臭の原因とされている皮膚常在菌に対する微生物発育阻止作用についてブレンド精油を用いてその相乗効果を検討した。Araらによれば足臭は常在菌のStaphylococcus epidermidisによって汗成分のイソロイシンから生産されるイソバレリアン酸が主体で,Bacillus snbldisも足臭の増加に関与しているという。寒天拡散法を用いて23種類の精油の抗菌活性を調べたのち,抗菌活性のみられる精油をブレンドして相乗効果を検討した結果,活性の強いレモングラスのブレンドオイルのデータからは相乗作用は見られなかった。活性の強くない精油の相乗効果について検討してみること,寒天拡散法以外の評価方法を検討してみることが課題となった。

キーワード

相乗効果,ブレンドオイル,抗菌活性