アロマテラピー検定・資格の認定、学術調査研究の実施

アロマの研究・調査

アロマテラピー学雑誌 Vol.7 No.1 (2007)

原著論文

精油中に含まれる発癌抑制性ゲラニルゲラノイン酸及びその関連化合物

著者名 小川弘子 四童子好廣
文献名 アロマテラピー学雑誌7(1)1-7 (2007)

 ゲラニルゲラノイン酸(GGA)は、発癌抑制作用を示す非環式ジテルペノイドである。我々は、最近、食用ハーブ数十種類の品目(五味子,ターメリック,バジル,ローズヒップ,シナモンなど)にGGAを固定し、他にGGA関連物質が天然に存在していることを報告した。本研究ではアロマテラピーなどに用いられる精油を対象として、GGA及びその関連化合物の検索を行った。その結果、これまで成分表示に現れていなかった多くの精油中に比較的高濃度のファルネソール(FOH)が含まれていることが判明した。なかでも、ネロリ(75.4mg/ml),ミルラ(68.5),イランイラン・ザ・サード(62.4)の3つの精油には極めて高濃度のFOHが含まれていた。FOHは、ヒト癌由来細胞株に対してアポトーシス誘導作用があることが知られており、これらの精油は、皮膚癌の予防・治療に適用できる可能性を示唆している。GGOH含量はFO含量とほぼ相関し、FOHのおよそ10~100分の1程度であった。GGAはレモングラスなどに初めて検出された。GGAの経皮吸収の可能性を解析する手がかりになると考えられる。

キーワード

精油、ゲラニルゲラノイン酸、ファルネソール、癌予防

ホップ精油の香りが脳機能に与える効果の精神生理学的研究―精油の濃度差による効果の相違の検討―

著者名 小長井ちづる 古賀良彦
文献名 アロマテラピー学雑誌7(1)9-14 (2007)

 ホップの香りが脳機能に与える効果、ならびに、その際の至適濃度を精神生理学的に明らかにすることを目的として、脳波基礎活動の周波数解析および聴覚オドボール課題による事象関連電位の測定を行った。対象は、健常成人男性9例、女性9例とし、3段階の濃度に希釈したホップ精油または無臭対照の匂いを嗅いでいる際の脳波を測定した。脳波基礎活動の解析の結果、男性において、8.0~8.5Hzの帯域のα波パワー値には試料間に有意の差異がみられ、無臭対象呈示時は各ホップ精油を呈示した際に比し有意にパワー値が大きかった。これは、ホップの香りは、男性に対しては覚醒効果があることを示す結果と考えられる。また、事象関連電位に関しては、男性では、P300潜時については試料間に差のある傾向がみられた。またP300振幅については試料間で有意の差が認められ、ホップの香りによって課題遂行能力が向上するという結果が得られた。以上より、ホップの香りが脳機能に与える影響には性差があり、とくに男性の場合、認知にかかわる神経機構の機能はホップ精油濃度の差異に敏感であることが示唆された。

キーワード

ホップ精油、α波、P300、性差

香りの脳波に及ぼす感情効果

著者名 山下富美代 林収一 中川一弥 増田浩幸 杉本圭一郎
文献名 アロマテラピー学雑誌7(1)15-28 (2007)

 香りはその種類に応じてさまざまな感情変化が生起することが知られている。本研究では、嗜好の個人差による影響の少ない香料を選択し、それが与える主観的経験としての「気分」が具体的にはどのような感情効果をもたらすかを大学生男女(延べ338名)を対象として、実験的なアプローチを試みた。主観的評価法としては、嗅覚刺激の言語反応が未熟なことを考慮して、従来のSD法(semantic differential method;意味微分法)に加えて、擬音語、擬態語による評価から香料刺激の感情価を測定した。また、それら感情の影響が心的作業に及ぼす気分一致効果を確認した上で、脳波トポグラフィにどのような変化が見られるか、その対応関係を定量的・定性的解析を通して検討した。その結果、嗜好度の高い香料刺激「レモン」については、香料提示前に比べて、β2を指標とする脳波トポグラフィの診断では非活性的快感情のパタンを示し、主観的評価のリフレッシュ感、爽快感との対応関係が得られた。

キーワード

EEGマッピング、気分一致効果、感情価、活性的快・不快

施術報告

アロマテラピートリートメントは運動によるストレス解消効果を増す

著者名 石井陽子 中谷真澄 三浦徹
文献名 アロマテラピー学雑誌7(1)29-39 (2007)

 妊娠中のストレスを解消させる効果的な方法についての研究を行った。調査期間は2004年5月21日~2004年7月23日、対象は18~35歳、妊婦16~40週の妊婦30名である。これら症例を3グループ、すなわち何もしないグループ運動のみのグループ、運動とアロマテラピートリートメントを行ったグループに分けて、運動によるストレス解消効果と運動後のアロマテラピートリートメントの効果を検討した。トリートメント法は妊娠中にかかえやすい体の不調である腰痛・肩凝りを意識し、座位、背位での施術とした。主観的調査としてアンケートとフェイススケールによる評価を行い、客観的評価として血圧・脈拍・動脈血酸素飽和度測定を行った。結果として、何もしないグループは、主観的評価のストレス度が高かった。運動のみのグループと、運動とアロマテラピートリートメントを行ったグループの、主観的評価(フェイススケール)と客観的評価(血圧・脈拍)から、運動にはストレス解消効果があり、運動後のアロマテラピートリートメントを行うことでリラックス効果が増すと考えられた。

キーワード

運動効果、アロマテラピートリートメント効果、ストレス解消、リラックス

研究ノート

 皮膚常在微生物に対する香り物質のMIC評価

著者名 野田信三 徳田千尋 伊藤麻美 岡崎渉
文献名 アロマテラピー学雑誌7(1)41-44 (2007)

 皮膚常在微生物(Escherichia coli IFO3972(ATCC8739),Bacllus Subtilis JCM2449
(ATCC6633),Serratia sp.A3,bacillus sp.G21)界面活性剤由来菌(Serratia sp A3,bacillus sp.G21)に対する香り物質(Eucalyputus oil,tea tree oil,Coriander oil,Ho oil,1,8-Cineole,Linaloo)のMIC評価を生菌数法とパフォーマンスレコーダー法によって行った。培養は、培地を15分間加圧殺菌(121℃)した後、32℃で所定時間行った。MIC値は、両者の方法ともよく一致した。香り物質の皮膚常在微生物に対するMICは香り物質の種類によって異なった数値を示した。アロマテラピストがトリートメントを実施するうえで精油の扱いには十分な配慮が必要である。

キーワード

精油、香り、MIC、皮膚、界面活性剤、微生物、アロマテラピー