街を歩いていたら、近くのヨガスタジオからふわっといい香りが流れてきたんです。それがラベンダーの香りだと分かり、ショップへ直行して精油を買いました。スーッと心と身体に染み込む、本当に素敵な香りだったんですよね。ショップでアロマテラピー検定についても知り、香りに背中を押されるように受験、アロマテラピーアドバイザーを取得しました。当時は病院の事務や受付などの仕事をしていたのですが、看護師さんたちのストレスや疲労感を目の当たりにしていたので、覚えた知識で「リラックス」「スッキリ」など用途別にアロマスプレーを作って、スタッフルームに置いたらとてもよろこばれて。そのうち院内感染予防にティートリーの精油を使ったり、待合室での時間を快適に過ごしていただけるように癒し系のブレンドアロマを焚いたりと、活用の幅を広げました。実際、アロマを香らせてから患者さんの待ち時間に対するクレームが減ったんですよ。

アロマについてもっと深く知りたい、知識や資格を活かしてみたいと思い始めていたとき、街のフリーペーパーでアロマテラピースクールのスタッフ募集の求人を見つけました。試しに受けてみようと面接に行ったら、面接官の方から「あなた、講師に向いているんじゃない?」と言われて……それがきっかけでアロマテラピーインストラクターの資格を取り、講師の道へ。あの時は、まさか20年近くもアロマ講師として生きていくことになるなんて思ってもいなかったのですが(笑)。何かを始めるとき、大きな目標や志を立てるよりも「とにかく一歩踏み出してみる」ほうが私には合っているんだと思います。以来多くの講座を重ねるなかで、アロマテラピーの魅力を伝えるには、言葉や香りだけでなく触れ合う感覚も重要だと感じ、サロンで修業を積み、アロマセラピストの資格も取得しました。「心と身体、両方を緩めることが大切」という想いで日々講座を行っています。

今から5、6年前、大きな会場で講座を行っていたとき、私の口元を熱心に見つめる受講者の方がいたんです。「もしかしたら」と思って休憩時間にお話ししたら、聴覚に障がいを持たれた方で、耳は聞こえなくても香りを楽しめるアロマを学びたかったんだと分かって。長年アロマに関わってきたのにそうしたニーズに初めて気づかされ、何かできることはないかと考え「手話を学ぼう!」と思い立ちました。手話教室を探し、仕事帰りに学び始めて2年ほど経ったころ、聴覚障がいの方を交えたアロマのチャリティ講座の依頼があったんです。耳にハンデがあると体験講座を断られるケースもあると知り、とにかく「“学べる場”をつくろう!」と覚悟を決めて、つたない手話での講座をスタートさせました。今では、聴覚に限らずさまざまな障がいをお持ちの方が私の講座に参加されるようになりました。アロマと出合い、新しい世界に踏み出していく姿を見ることも増え、それが私のやりがいにもつながっています。

社会に貢献したい、誰かによろこんでもらいたいという思いは、誰の心の中にもあると思っていますが、ハンデのある方はサポートされる側であることが多いのが現状です。しかし、聴覚障がいの方々と出会って、それぞれが持てる力を活かして互いに助け合う社会を築いていくきっかけとして、アロマテラピーが役立てられるのではと感じるようになりました。これまでの経験から、聴覚障がいの方は香りに対して繊細な感覚をお持ちであるケースが多いと感じますので、そうした個性を香りの分野で活かすことで、より主体的に社会と関わっていけたり、活躍できたりするような気がしています。これからもアロマテラピー講師として、私にできることを模索しながらひとりひとりが活躍できる社会へと、可能性を広げていきたいと思っています。

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AEAJ 公益社団法人 日本アロマ環境協会

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