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-ウィズ・コロナの状況が続き、ビューティー市場ではどのような変化が起こっていますか。

西脇さん(以下、N): ビジネスシーンではオンラインでの会議が頻繁に行われ、画面に映る自分の顔と向き合う機会が増えたためか、これまで以上にスキンケアが見直されていると感じます。今まで気にしていなかったという男性もシミや肌荒れ対策に乗り出し、男性スキンケア製品の需要は増加傾向です。また、もう少し大きなカテゴリーで捉えると、空間芳香へのニーズが高まっています。在宅の閉塞感を突破するアイテムとして「香り」が重要視され、特に、家にいながら自然を感じられる天然の香りへのニーズは飛躍的に伸びています。

山田さん(以下、Y):私自身ずっと香りの研究に関わってきましたが、人々が香りに求めるものは時代によっても変化しているように感じます。歴史的には、悪臭をマスキングする発想から香りをまとう文化が生まれ、さらによい香りで他人にアピールする流れができ、やがて自身のリフレッシュやリラックスといった内面のエモーションに働きかける香りが注目されてきました。資生堂は、それまで伝承的だった“香りが人の心と身体に働きかけるメカニズム”を科学的に証明しようとするアロマコロジーの研究に、1980年代から取り組んできました。

(西脇さん)2016年資生堂入社。化粧品のグローバルマーケティングに精通。「BAUM」ブランド立ち上げに携わる。
(山田さん)2017年資生堂入社。国内外ブランドの香料開発を行う。「BAUM」の香料開発を担当。

-御社のアロマコロジーへの取り組みについて教えてください。また、研究結果は実際の製品開発にどのように活かされていますか。

Y:研究には大きく二通りあります。例えば、素材そのものに着目し、「ラベンダー精油」が副交感神経を活性化させることを実証する、というような場合と、「〇〇クリーム」の香りが身体に及ぼす変化を測る、というような、商品化までを見据えた研究とする場合。それぞれゴールイメージによって測定方法が変わってきますが、共通するのは、被験者の「心理」「生理」「行動」が香りをかぐことによってどう変化するか、その3つの指標に対する反応を総合して判断するところです。アロマコロジー効果にとどまらずターゲットの嗜好性や製品としての品質も考慮し、香りを決定する際にはさまざまな研究結果が応用されています。

N:研究を開始した80年代にも、香りと心・身体の関係を踏まえて設計された商品は発売されてはいましたが、そのようなアプローチが本当の意味で価値を持ってきたのは最近になってからだと思います。毎日膨大な情報量にさらされている私たち現代人は、身体はもちろん精神的にもかなり負担を強いられていますよね。最近では、美容の課題はもはや「アウターケアだけでは解決できない」とお客さま自身も気づき始めていて、これまで培ってきたアロマコロジーの研究成果、特に天然由来の香りがどのように心と身体に働きかけるかという知見は重要度を増しています。

-心(マインド)へのアプローチも踏まえて商品を設計されるというのはとても興味深いですね。

2020年6月に発売した「BAUM」は“樹木との共生”をテーマにしたブランドで、肌と心の両方に働きかけます。デジタル時代のスキンケアは、マインドケアもセットで考える必要があるという発想から生まれました。

-樹木に着目されたのはどういった理由からですか。また、「BAUM」における香りの役割を教えてください。

N: 地球環境に配慮したものづくりが世界的なトレンドだと感じる中で、まずはブランドのフィロソフィーを“サステナブル”としました。その上で議論を重ね、樹木の細胞を通して行われる水の循環やライフサイクルの長さに着目し、フィロソフィーを伝える素材として良いのではないかという結論に達したのです。そして、香りはまさに「BAUM」の核となる要素のひとつを担っています。よく「森林浴」といいますが、森に入ったときのあの清々しい気持ち、実際にはフィトンチッドと呼ばれる揮発性物質が免疫力の向上やストレスを低減させる力を発揮しているといわれていますが、そのフィトンチッドを多く含んだシダーウッド精油をすべての製品の香りのベースに据えています。現代人の求める癒しに加え、物理的にも閉塞感のある生活を強いられる中で、この森林浴を体感できる香りは男女問わず多くの方に受け入れられています。

Y: しかし、ナチュラルな樹木の香りというのは意外と重かったり、暗いところがあったりします。皆さんがイメージする“森林浴の清々しさ”が感じられるよう、また、実際に商品を使っていただくシーンも想定して繊細に香りを重ねて調整しています。毎日肌に触れるものには、やさしくてリフレッシングなヒノキ系にベルガモットで洗練さを加えたり、深いリラックスに寄り添うアイテムにはサンダルウッドの濃厚な香りを使用しますが、重くなり過ぎないように他の精油でバランスを取ったり、気分を上げるようなアイテムには森林といえども華やかな印象になるような香りをプラスしたり。そして全体として都会的で洗練された「心地いい」香りに持っていき、それが最終的に“スキン&マインド”ブランドとしての価値を生み出していくのだと思います。

N: 現在の美容マーケットを見ると、デバイスの活用や外科的な処置も含めて即効性を追求する軸と、変化はゆっくりでもより良いものを取り入れライフスタイルから根本的に改善しようという軸と、二極化しています。トータルにビューティーを扱う当社としては当然両方のニーズに応えなくてはならないのですが、資生堂の発展の歴史には東洋的な思想を踏まえた部分もあり、事業の強みはホリスティックなアプローチにあると思っています。表面的な美だけでなく内面の美しさを引き出すお手伝いとして、アロマコロジーをはじめとしたさまざまな香りの研究は今後ますます必要とされるのではないかと考えています。

AEAJ 公益社団法人 日本アロマ環境協会

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