仕事と子育てで忙しく、自分のことを振り返る余裕のなかった40代初めごろ、身体を壊してしまったことがあったんです。幸い、手術をしてしばらくしたら動けるようになりましたが、長引く入院生活で気持ちも落ち込みがちでした。そんなとき、お見舞いにアーティフィシャルフラワー(造花)をいただいて。感染症のリスクから生花の持ち込みが禁じられていたためアーティフィシャルフラワーだったのですが、その鮮やかな色彩にずいぶん救われました。ぱっと華やいだ病室を見たら、生きている実感がわいてきたんです。また、以前は気分転換に香らせる程度だったアロマにもすごく癒されて。病院にもいろいろな「におい」がありますが、「香り」とはまったく別物なんだと改めて気づき、脳を刺激し、気持ちを前向きに変えてくれるアロマテラピーの力を強く感じました。
退院後、療養中に感じた“色と香り”が気持ちにもたらす変化について、多くの人と分かち合いたいと思うようになりました。そこでアーティフィシャルフラワーとアロマを本格的に勉強し、(花の)色とアロマで暮らしに彩りを添える教室をオープン。アーティフィシャルフラワーのアレンジを飾ったり、そこにアロマをプラスしたり、香りに興味を持った方にはアロマのレッスンも行っています。はじめは友人や知人ばかりでしたが、SNSで発信するうちに私のことを知らない方も学びに来られるようになり、そんなときは知識を身に付けた証の資格が、名刺代わりとなって役立っています。
あるとき、お母さんばかりが集まったレッスンがあり、思春期の男の子と向き合う難しさを語り合いながらアロマのトリートメントオイルを作りました。その後、運動して帰ってきた息子さんにクールダウンする香りでトリートメントをしてあげたら、「しばらく会話がなかったけれど久しぶりに笑い合って、家の中も明るくなった」とご報告いただいて。私も3人の子どもを持つ親としてその気持ちがよく分かり、アロマがつなぐ縁のようなものを感じました。
アロマテラピーは、科学的な研究も進んでいる自然療法のひとつであり、そこに大きな魅力を感じます。100%自然由来のものを使うからこそ私も自信を持って勧められますし、家族や教室にいらっしゃる皆さんの毎日の笑顔につながれば、という思いでレッスンしています。