アロマテラピー検定 公式テキスト1級
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69 2級でも学びましたが、精油が人間の心と身体に作用する経路は、大きく分けて次の2つがあります。 ひとつは感覚器(嗅覚)から脳へ伝わる経路です。もうひとつは皮膚や粘膜を介して血管に入り、血液循環により全身に伝わる経路です。血液循環による経路は精油がどこから血管に入るかによって、さらに呼吸器、皮膚、消化器の3つに分かれます。嗅覚から脳へ伝わる経路 精油の香りを嗅いだとき、精油成分の分子は鼻の奥の上部にある、においを感じる部分にあたる嗅上皮の粘膜に付着し、そこにある嗅細胞から出ている繊毛(嗅毛)に受容されます。嗅毛に精油成分の分子が受容されると、嗅細胞が興奮することにより、嗅覚刺激が電気的信号(インパルス)に変換され嗅神経に伝わります。その信号が脳の中に伝わり、嗅球、嗅索を経て、大脳辺縁系という脳の領域(機能単位)に到達します。そのあとに大脳皮質の嗅覚野に伝わり、「におい」として認知されます。アロマテラピーのメカニズム精油が心身に作用する経路 アロマテラピーに用いられる精油は、人間の心と身体にどのように作用するのでしょうか。そして、アロマテラピー利用法によって精油の香りを嗅ぐことや、トリートメント法で身体に触れられる体験などは、どのように私たちの脳で受け止められ、心と身体に作用するのでしょうか。 私たちは見る、聴く、嗅ぐ、味わう、そして触れるなどの感覚をもっています。周囲の状況は感覚器官から神経を通じて情報として脳に送られます。脳はそれらの情報を認知統合し、適切な判断を行ったり行動の指令を出します。五感のうちで光・音・熱などを感じ取る視覚・聴覚・触覚は物理的な感覚と呼ばれ、味覚・嗅覚は化学的な感覚と呼ばれています。生物は進化するにつれ、視覚や聴覚からの情報で状況判断をすることが多くなりますが、依然として嗅覚は食べもののよしあしの判断や生殖など生命維持に重要な役割を担っています。ここでは精油の作用経路、嗅覚の生理メカニズムや脳のしくみ、精油の薬理作用を詳しく見ていきましょう。第4章 アロマテラピーのメカニズムと健康学

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