
植物の学名について

精油のパッケージには、「ペパーミント」「ラベンダー」など、植物の名前の通称が「品名」として表示されています。しかし、植物は国や地域によって呼び方が異なったり、同じ和名でも異なる種類の場合があるため、間違いを防ぐために、全世界共通の呼び名である「学名」を使用します。AEAJ表示基準適合精油には、必ず「学名」が表記されています。
ここでは、アロマテラピーを学ぶ上で必要不可欠な植物の「学名 (Scientific Name)」について、会報誌に連載され好評だった『植物の学名を知る』の中から一部を抜粋し、ご紹介いたします。
「植物の学名を知る」(AEAJ会報誌より)
著者プロフィール
大槻真一郎(おおつき・しんいちろう)
明治薬科大学名誉教授。京都大学大学院博士課程(古代ギリシャ哲学専攻)修了。博物研究者として、主に植物・鉱物・動物・天文・医・薬学分野のギリシャ・ラテン原典研究、解説、翻訳などを幅広く手がける。
日本では和名、標準和名、英名、学名など多数の植物の呼び方があります。例えば「胡椒」は和名、Piper nigrumは学名、Pepperは英名となります。また、日本において同じ種であっても地方によって呼び方が異なることがあり、それらを統一するために「標準和名(Common Japanese Name)」が用いられています。
学名を知る上での基本的なこと
科・属・種
「種(species)」が植物を分類する際の基本単位として使われています。その種を集めたグループが「属(genus)」であり、それを集めたものが植物を分類する上で最も一般的な「科(familia)」となります。 また、それらをまとめていくと、上位から界(kingdom)・門(division)・綱(class)・目(order)というように段階式という仕組みで植物が分類されています。これら現在の分類法の基礎は18世紀のスウェーデンのC.リンネの「2命名法」や18~19世紀フランスのA.L.ジュシューによる「自然分類法」がもとになっています。
構成
学名は普通2つの単語で構成される「2命名法」と呼ばれる方式で表されます。このときの表記方法にはいくつかのルールがありますが、次のものは「国際命名規約」にも定められているものです。
- 属名と種名はイタリック(斜字体)で表す。
- 属名は頭文字が大文字で後は小文字。種名はすべて小文字とする(→種小名)。
| スィートオレンジの場合 | Citrus sinensis |
|---|---|
| 属名 種小名 |
ただし公式には、Citrus sinensis Osbeckのように命名者の名を最後につけ3本立てにすることが正式の学名表記です(この場合、Osbeck=命名者)。その際、Linné(リンネ)をL.とかSiebold(シーボルト)をSieb. などと簡略化することが一般的です。詳しくは植物事典を参照して下さい。 種以下の階級を書く場合は、種小名に続けて下記のように書かれます。
| subsp. またはssp. | 亜種 |
|---|---|
| var. | 変種 |
| f. | 品種 |
ラテン語
学名はラテン語で書かれています。ラテン語は近世以降のイタリア語、スペイン語、フランス語などのラテン系諸言語のもととなったものです。もともと古代ローマのLatium族の言語でしたが、ローマ帝国の時代には広範囲で使用されていました。やがて死語となりましたが、ローマカトリック教会の公用語として、中世・近代ヨーロッパでは学術用語として使われ、その歴史は18世紀頃まで続きました。しかし、現代もバチカン市国では公用語として用いられています。
学名の読み方
読み方の基本はローマ字発音となります(aは「ア」、bは「ブ」、-umは「ウム」、-usは「ウス」というように。-um、-usをそれぞれ「アム」「アス」とつい読んでしまうのは英語読みですから要注意)が、いくつかのアルファベットはローマ字発音と異なる読み方をします(下表参照)。
| c、ch | カ、キ、ク、ケ、コ | j | ヤ、イ、ユ、イェ、ヨ |
|---|---|---|---|
| ph | ファ、フィ、フ、フェ、フォ | qu | クァ、クィ、ク、クェ、クォ |
| v | ウァ、ウィ、ウ、ウェ、ウォ | x | クサ、クシ、クス、クセ、クソ |
| y | イ |
子音の次に母音のない場合は、子音の後にuを入れたようにして読む。archi(アルキ) pro(プロ)など。
| 精油名 | 原料となる植物の学名 | 読み方 | |
|---|---|---|---|
| 1 | イランイラン | Cananga odorata | カナンガ・オドラタ |
| 2 | オレンジ・スイート | Citrus sinensis | キトルス・シネンシス |
| 3 | カモミール・ジャーマン | Matricaria recutita | マトリカリア・レクティタ |
| Matricaria chamomilla | マトリカリア・カモミラ | ||
| 4 | カモミール・ローマン | Anthemis nobilis | アンテミス・ノビリス |
| 5 | クラリセージ | Salvia sclarea | サルウィア・スクラレア |
| 6 | グレープフルーツ | Citrus paradisi | キトルス・パラディシ |
| 7 | サイプレス | Cupressus sempervirens | クプレッスス・センペルウィレンス |
| 8 | サンダルウッド | Santalum album | サンタルム・アルブム |
| 9 | ジャスミンアブソリュート | Jasminum grandiflorum | ヤスミヌム・グランディフロルム |
| Jasminum officinale | ヤスミヌム・オフィキナレ | ||
| 10 | ジュニパー | Juniperus communis | ユニペルス・コンムニス |
| 11 | スイートマージョラム | Origanum majorana | オリガヌム・マヨラナ |
| 12 | ゼラニウム | Pelargonium graveolens | ペラルゴニウム・グラウェオレンス |
| Pelargonium odoratissimum | ペラルゴニウム・オドラティッシムム | ||
| 13 | ティートリー | Melaleuca alternifolia | メラレウカ・アルテルニフォリア |
| 14 | ネロリ | Citrus aurantium | キトルス・アウランティウム |
| 15 | パチュリ | Pogostemon cablin | ポゴステモン・カブリン |
| Pogostemon patchouli | ポゴステモン・パチュリ | ||
| 16 | ブラック ペッパー | Piper nigrum | ピペル・ニグルム |
| 17 | フランキンセンス (オリバナム/乳香) |
Boswellia carterii | ボスウェリア・カルテリイ |
| Boswellia thurifera | ボスウェリア・トゥリフェラ | ||
| 18 | ベチバー | Vetiveria zizanioides | ウェティウェリア・ジザニオイデス |
| 19 | ペパーミント | Mentha piperita | メンタ・ピペリタ |
| 20 | ベルガモット | Citrus bergamia | キトルス・ベルガミア |
| 21 | ベンゾイン | Styrax benzoin (スマトラ産) | スティラクス・ベンゾイン |
| Styrax tonkinensis(シャム産) | スティラクス・トンキネンシス | ||
| 22 | ミルラ(マー/没薬) | Commiphora myrrha | コンミフォラ・ミルラ |
| Commiphora abyssinica | コンミフォラ・アビッシニカ | ||
| 23 | メリッサ(レモンバーム) | Melissa officinalis | メリッサ・オフィキナリス |
| 24 | ユーカリ | Eucalyptus globulus | エウカリプトゥス・グロブルス |
| 25 | ラベンダー | Lavandula angustifolia | ラワンドゥラ・アングスティフォリア |
| Lavandula officinalis | ラワンドゥラ・オフィキナリス | ||
| 26 | レモン | Citrus limon | キトルス・リモン |
| 27 | レモングラス | Cymbopogon flexuosus | キンボポゴン・フレクスオスス |
| Cymbopogon citratus | キンボポゴン・キトラトゥス | ||
| 28 | ローズ・アブソリュート | Rosa centifolia | ロサ・ケンティフォリア |
| Rosa damascena | ロサ・ダマスケナ | ||
| 29 | ローズ・オットー | Rosa damascena | ロサ・ダマスケナ |
| 30 | ローズマリー | Rosmarinus officinalis | ロスマリヌス・オフィキナリス |
ラテン語では長音、例えばMatricariaは「マートリカリア」、Origanumは「オリーガヌム」、Rosmarinusは「ロスマリーヌス」と読みますが、学名では長音で読まないのが普通です。
(会報誌No.30掲載「植物の学名を知る」より)
