-御社の事業内容を簡単に教えてください。
医療の現場で脳波を計るときは、たくさんの情報を収集することが目的になると思いますが、私たちは“感情”に特化したデータだけを取り出し、エンターテイメントや暮らしに役立てていただくためのサービスを提供しています。人の脳が発するさまざまな電気信号(脳波)のうち、α波の占める割合が高くなると「リラックスしている状態」と判定されますが、実はリラックスにもいろいろあります。眠っているとき、入浴しているとき、のんびりとドライブしているとき…… それぞれのシーンで感じる、異なるリラックスの“質”までを分析し、感情の種類を67種類にまで細分化しています。脳波が示す値に行動・環境要因を加えた感情のプロフィールをライブラリー化し、「世の中をもっと良くしたい」「楽しくしたい」と考えている大学や企業の方々と一緒にそうしたデータを活用し、新しいビジネスやサービスの開発に役立てるお手伝いをしています。

米国の大学にて応用物理博士号前期終了後、大手機械メーカー研究所勤務を経て渡独。帰国後、ソフトウェア開発会社経験ののち、国立研究所や大学医学部にて波形や脳波の研究に携わり'14年株式会社リトルソフトウェアを設立。代表取締役。

-具体的には、脳波と感情のデータをどのようにビジネスに結び付けていくのですか。
感情には、五感からの情報がかなり影響します。こうして会話をしていても、大きな物音がすればそちらに意識が向きますし、食べ物のいい匂いが漂ってくれば「お腹がすいたな」と、一瞬にして感情が支配されますよね。五感の刺激が感情を動かすという気づきから、まずは“音楽”に着目しました。私自身ストレスを抱えていたとき音楽に救われた経験があり、どんな音楽をどんな状態で聴くと、脳がどう反応し、どういった感情を呼び起こすのかを、ある大学の医学部の協力のもと膨大な楽曲データで臨床実験を行いました。その結果を音楽会社に持ち込んで研究を進めたところ、特定の感情を呼び起こす音楽のパターンが見えてきて、「イライラ解消の音楽」や「ワクワクする音楽」がうまれたのです。さらにそれが自動車部品メーカーの目に留まり、快適で安全な運転をサポートする次世代自動車の開発にまで広がりました。そして、音楽がある程度形になったところで、次は嗅覚を刺激する“香り”についての検討をはじめました。

-香りの活用では、どのようなビジネスの可能性がありますか。
自動車業界に注目しています。AIによる自動運転技術の発達などで人と車の関係が進化し、車内で過ごす時間をいかにエンターテイメント化するかが自動車メーカーの間でも課題になりつつあります。五感のなかでも嗅覚はとても反応が早く、かつダイレクトに感情に届くため、香りと車のコラボレーションもさまざまなものが考えられています。いま「面白いな」と思っているのは、目的地の香りを移動中の車内から体験できるアロマの開発です。海に向かう途中、ふと潮の香りを感じて「運転の疲れが吹き飛んだ」という経験はありませんか?いわゆる精油の効能を活かして運転中の疲れを和らげたり、眠気を覚ますアロマは、半ば強制的に身体の覚醒を促すため心地よいばかりでないときもあります。一方、目的地の香りで元気になる、目が冴える場合は、そこへ向かう期待感が心地よい覚醒を促しています。覚醒の“質”にこだわるアロマの開発にビジネスの可能性を感じています。

-香りの活用という観点で、社会に対しては何かお考えになっていることなどありますか。
社会課題の解決にも、脳波測定とアロマが役立つと思っています。子どもはイライラしている自覚のないまま怒りの感情を抱えることがあると、脳波を調べて分かりました。そんなとき適切な香りで五感を刺激し、感情のコントロールをサポートできればと考えています。海外の事例で、不良校として問題の多い学校にアロマを導入した途端に暴力が減った、という報告もあります。 もう一つは、高齢化社会に向けた認知症予防に脳波測定とアロマを役立てることです。嗅覚を効果的に刺激することで認知症改善に役立つという研究結果がある大学で示されましたが、私の両親も毎日アロマを嗅いでいたら、以前は出て来なかった人の名前なども今では私より思い出せるくらいです。親の世代でも、脳はまだまだ活性化するんだなと実感しています。

日本では、医療面からのアロマテラピーのアプローチは難しい状況です。私たちの研究を通して香りが脳波に及ぼす影響や、それが人々の行動や生活の改善につながるという実証データが示せれば、アロマはもっと世の中に浸透すると思いますので、そうした意味でも香りに注力して取り組んでいます。

AEAJ 公益社団法人 日本アロマ環境協会

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